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東京地方裁判所 昭和38年(刑わ)2385号 判決

被告人 松崎長作 外二七名

主文

被告人松崎長作を懲役三年に、

被告人三沢美照、同松尾繁弌、同飯田新太郎、同根本米太郎を各懲役一年六月に

被告人坂戸公顕を懲役一年二月に

被告人森本政一、同原文雄を各懲役一年に

被告人永里一朗、同入倉邦雄、同福岡喜一を各懲役一〇月に

被告人小池保、同野々上武敏を各懲役八月に

被告人木下崇俊、同田村忠義を各懲役六月に

被告人横山昇一、同田仲誉善、同八賀晧太郎、同浅野浩、同藤井清治、同星野虎次郎、同笹部長次を各懲役四月に

被告人今進一を罰金七万円に

被告人木村義郎を罰金五万円に

被告人吉留広男、同石切山虎雄、同石川泰三、同松本文男を各罰金四万円に

処する。

ただし、この裁判確定の日から、被告人飯田新太郎、同根本米太郎に対し五年間、被告人坂戸公顕、同森本政一、同原文雄に対し四年間、被告人永里一朗、同入倉邦雄、同福岡喜一、同小池保、同野々上武敏、同木下崇俊、同横山昇一、同田仲誉善、同八賀晧太郎、同浅野浩、同藤井清治、同星野虎次郎、同笹部長次に対し三年間右各刑の執行を猶予する。

未決勾留日数中被告人松崎長作に対し六〇日、被告人三沢美照に対し五〇日を右各刑に算入する。

被告人今進一、同木村義郎、同吉留広男、同石切山虎雄、同石川泰三、同松本文男が右各罰金を完納することのできないときは、金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

押収にかかる選挙用ポスター合計二七八枚(昭和三九年押第一〇三号の一九から一五一まで)に貼付されている各偽造証紙は被告人松崎長作、同三沢美照、同飯田新太郎、同永里一朗、同入倉邦雄から、押収にかかる現金一一万円(昭和三九年押第一〇三号の一五八、一五九)は被告人森本政一から、これを没収する。

被告人松崎長作から金一一万円、被告人飯田新太郎から金二五万円、被告人坂戸公顕から金五五万円、被告人森本政一から金二〇万円、被告人松尾繁弌から金五五万円、被告人原文雄から金七万八〇〇〇円、被告人小池保から金三万円、被告人田村忠義から金一〇万円、被告人野々上武敏から金一三万円、被告人横山昇一、同田仲誉善、同八賀晧太郎、同浅野浩、同藤井清治、同星野虎次郎、同笹部長次から各金四万八〇〇〇円、被告人今進一から金三万八〇〇〇円、被告人木村義郎から金三万円、被告人吉留広男、同石切山虎雄、同石川泰三、同松本文男から各金二万円を追徴する。

被告人今進一、同木村義郎、同吉留広男、同石切山虎雄、同石川泰三、同松本文男に対し、公職選挙法所定の選挙権及び被選挙権の停止期間を各三年間に短縮する。

訴訟費用(各証人に支給した分)は、別紙一覧表(一)記載のとおりそれぞれ関係被告人の負担とする。

理由

(冒頭事実)

第一、被告人らの職業、地位等

被告人松崎長作は、自由民主党発足(昭和三〇年六月)以来の本部事務局職員であつて、広報委員会事務主任を経て、全国組織委員会事務主任の地位にあつたもの(本件各選挙当時における選挙関係事務担当者としての地位等については後述)、被告人三沢美照は、各種印刷物の受注・納入を業とする株式会社照文社の代表取締役であつて、昭和三三年九月頃被告人人松崎を知つて以来、自由民主党本部をも得意先としてこれに出入りし、特に選挙時期においては、被告人松崎を通じ、同党本部等から各種の選挙関係印刷物の発注を得、同時に、同被告人の下で選挙運動にも関係するに至つていたもの、被告人永里一朗、同入倉邦雄は右株式会社照文社の取締役であつたもの、被告人福岡喜一は広告代理業中外通信社代表取締役として会社の経営に当る傍ら、自由民主党東京都支部連合会総務及び青年部副部長として党活動に従事し、本件東京都知事選挙に際しては、同連合会青年部東京都知事選挙対策連絡委員会の事務責任者であつたもの、被告人飯田新太郎は東京都福利厚生部福祉課福祉係長の地位にあつたもので、右知事選挙に際しては、東竜太郎候補の選挙事務所に出入りして同候補者のため選挙運動に従事していたもの、被告人木下崇俊は日本不動産株式会社の社員であるが、右知事選挙に際しては、東候補の選挙事務所において選挙事務に従事していたもの、被告人根本米太郎は衆議院議員川島正次郎の議員秘書であるが、昭和三六年七月同人が国務大臣、行政管理庁長官、北海道開発庁長官に就任の際は、その大臣秘書官となり、昭和三八年六月までその職にあつたもの、被告人森本政一はいわゆる三業界の業界紙である旬刊「朝日タイムズ」の発行経営者、被告人坂戸公顕は自ら創立した女性問題研究所の理事長をする傍ら、浅草寺福祉会館嘱託・国連協会東京都本部婦人部嘱託等をしていたもの、被告人野々上武敏は都政関係のニユース報道紙(以下庁内紙と略称する。)旬刊「政治新聞」及びオリンピツクを中心とした東京都の行政施策を報道する「日刊オリンピツク通信」の発行経営者であつたもの、被告人松尾繁弌は庁内紙日刊「東京都新聞」の発行経営者で、庁内紙のうち一六社で組織する丸の内倶楽部に所属し、右知事選挙当時はその幹事であり、また東京都内に発行所及び購読者を持つ地方新聞発行者で結成している東京都新聞連盟の会長をしていたもの、被告人原文雄は庁内紙週刊「東京税務情報」、被告人横山昇一は同旬刊「都市情報」、被告人田仲誉善は同旬刊「みやこ新聞」、被告人八賀晧太郎は同週刊「官界新報」、被告人浅野浩は同旬刊「東京都タイムス」、被告人藤井清治は同旬刊「政経評論」、被告人星野虎次郎は同旬刊「東京都民新聞」、被告人今進一は同旬刊「自由公論」、被告人笹部長次は同旬刊「都政合同通信」、被告人木村義郎は同旬刊「東京中央新聞」の各発行経営者であつて、いずれも前記丸の内倶楽部に所属していたもの、被告人田村忠義は庁内紙日刊「開発新聞」を発行すると共に、「田村政治研究所」を主宰し、毎月二回位政治経済の研究発表を内容とする出版物を刊行していたもの、被告人小池保は庁内紙旬刊「都政特報」の発行経営者で、庁内紙のうち五社で組織する都政記者会に所属し、本件都知事選挙当時はその幹事をしていたもの、被告人吉留広男は同記者会所属の庁内紙旬刊「東京都政新聞」社に、被告人石切山虎雄は同記者会所属の同週刊「都民新聞」社に、被告人石川泰三は同旬刊「都政展望」社に勤務し、それぞれその編集、発行等の業務に従事していたもの、被告人松本文男は庁内紙週刊「東洋報知」の発行経営者であつたものである。

第二、本件各選挙における被告人松崎の選挙事務担当者、選挙運動者としての地位等

(東京都知事選挙関係)

自由民主党本部は、昭和三八年四月一七日施行の東京都知事選挙に際し、同党の推せん候補者である東竜太郎を応援するため、その告示前、党本部に自民党東京都知事選挙対策委員会(委員長同党副総裁大野伴睦)を設け、次いで同年二月初頃、同委員会と、自民党東京都支部連合会に設けられた東京都知事選挙対策委員会及び同年一月頃設立された東竜太郎後援会との連絡調整を計るため、党本部内に自民党東京都知事選挙対策委員会連絡本部を設置し、その本部長に党総務会長赤城宗徳が就任し、事務主任には被告人松崎が任命された。同被告人は、東京都千代田区平河町二丁目七番地砂防会館内自民党本部の一室を右連絡本部の事務室として、党本部事務局の各部局と連絡を保ちつつ、前示都連選挙対策委員会、東後援会(選挙の告示後は東候補の選挙事務所)等との選挙対策に関する連絡調整等の事務を担当すると共に同候補者のための選挙運動に従事した。右連絡本部の支出する選挙対策の資金は、いわゆる党活動費として幹事長に対し党本部会計から一括支出される資金のうちから賄われる関係上、経常費支出の際はその都度必要とする上司の禀議決済の手続を経ることなく、その支出をなしうることとなつており、被告人松崎は、前回の都知事選挙においても右同様の体制下で連絡本部事務主任として働き、東候補の当選を導くに預つて力があつた実績から、同被告人には今回も、選挙対策費用の支出については、相当程度の自由が認められていた。

(千葉県知事選挙関係)

昭和三七年一〇月二八日施行の千葉県知事選挙において自由民主党は加納久朗を公認候補者として立てたが、これに対抗して同じ保守系である当時の同県知事柴田等が四選をめざして立候補したため激戦が予想された。被告人松崎は加納候補を支持する前記川島正次郎の依頼によつて同候補者を応援するため、右選挙地に赴き、当時川島に加納候補の応援を申し入れたうえ、自己の輩下をいわゆる泡沫候補として立候補させていた肥後享と結んで、加納候補のため側面的に選挙運動を展開した。

(罪となるべき事実)

第一、証紙偽造、同使用等

一、(東京都知事選挙関係)

(一) 被告人松崎は、前記東京都知事選挙の告示前である昭和三八年三月半過頃、東候補の対立候補である阪本勝側において、既に活発な文書活動をしているとの情勢判断に基き、これに対抗し得る東候補側のポスター頒布等の文書戦術について考えていた折柄、被告人三沢からポスターに貼付する東京都選挙管理委員会の証紙の偽造を持ちかけられてこれに賛成し、前記選挙の告示当日たる三月二三日に至り、これを実行に移すこととなり被告人三沢においてその印刷の注文、手配等一切を引受けることとなつた。ついで被告人松崎は同日頃、前記自由民主党本部等において、被告人飯田に右企図を打開け、偽造証紙の印刷仕上りの際には、これを法定外ポスターに貼付する作業及びその頒布方の分担を依頼し、同被告人もこれを承諾した。かくして、翌二四日頃、被告人三沢は、被告人松崎から東候補の選挙事務所に保管する前記選挙管理委員会から交付された「東京都選管」の文字及び同候補者の届出順位を示す「4」の数字等の表示がある正規の証紙二〇枚余を偽造証紙作成の資料として受取り、被告人永里、同入倉に右証紙を示して、偽造証紙の印刷作成につき協力方を求めたところ、右被告人両名も右企図を了知してこれを引受けた。

(1) 右のとおり、被告人松崎、同三沢、同飯田、同永里、同入倉は共謀のうえ、行使の目的をもつて、先ず被告人三沢が前記証紙の拡大写真により作成した地紋部分と文字部分を分離した各図案を準備し、被告人入倉が同年四月一日頃までに版下製作業者に依頼して、右各図案を実物証紙大に縮尺した凸版版下原稿を作成させ、さらに同月四日頃までに右文字部の版下原稿により、製作業者に依頼して一六面の亜鉛凸版を作成させた。一方被告人永里において、右地紋部分の版下原稿により右同様業者に依頼して一六面亜鉛凸版を作成させ、それぞれ印刷偽造に必要な準備を整えたうえ、被告人入倉が、同月五日頃、台東区車坂町四五番地有限会社教潤社(代表者伊藤静)に赴いて、右各亜鉛凸版による証紙の印刷を注文依頼し、同日頃から翌六日頃までの間に同会社をして予め用意してあつたA模造紙約一、〇〇〇枚に印刷させて、「東京都選管の文字及び候補者届出順位を示す「4」の数字等を表示する証紙約一万六〇〇〇枚を作成し、もつて公務所である東京都選挙管理委員会の前記記号を偽造し

(2) 被告人松崎、同三沢、同飯田及び同年四月一一日頃からその情を知つて加担した被告人福岡は共謀のうえ、被告人飯田が同月七日頃から同月一一日頃までの間中央区日本橋通三丁目二番地広瀬ビル三階安井謙事務所ほか一ヶ所で、被告人木下崇俊らを使つて右偽造証紙を貼付した法定枚数を超える東候補の選挙運動用ポスター合計約八、〇〇〇枚のうち約一、八二七枚を、包括犯意をもつて、別紙一覧表(二)記載のとおり、同月九日頃から同月一三日頃までの間、前後二四回にわたり、同表記載の各交付者において、前記自由民主党本部ほか一五ヶ所で、情を知らない森本政一ほか二三名に対し、それぞれ頒布及び掲示方を依頼して、同表記載の枚数宛一括して交付し(但し、被告人福岡はうち一五回にわたり計約一三五一枚交付した分のみに関与)、もつて偽造にかかる前記公記号を使用するとともに、法定外文書である前記ポスターを頒布し

(二) 被告人木下は、被告人飯田から前記偽造証紙を東候補の選挙運動用ポスターに貼付することを依頼されるや、右証紙が偽造のものであつて、これを貼付したポスターは法定枚数を超えて掲示するため頒布されるものであることを知りながら、石井荘司外四名と共謀のうえ、同年四月七日から同月一一日頃までの間、前記安井事務所ほか一ヶ所において、合計約八、〇〇〇枚の東候補の法定外ポスターに、それぞれ右偽造証紙を貼付し、もつて同被告人らの前記偽造公記号の使用及び法定外文書の頒布の犯行を容易にしてこれを幇助したものである。

二、(福岡県知事選挙関係)

被告人三沢は、前記一の証紙偽造の準備中であつた同年三月二七日頃、かねて選挙用ポスターの証紙の偽造が可能であることを示唆してあつた衆議院議員秘書渡辺一から、同年四月一七日施行の福岡県知事選挙に立候補した鬼丸勝之助の選挙用ポスターに貼付する証紙の作成偽造方を依頼されるやこれを引受け、その頃、この旨を被告人永里、同入倉に伝え、前同様の協力を求めてその承諾を得、かくして被告人三沢、永里、同入倉は右渡辺らと共謀のうえ、行使の目的をもつて、先ず被告人三沢において、右渡辺から、鬼丸候補の選挙用ポスターに貼付するため福岡県知事選挙管理委員会から交付された「福岡県選管」の文字及び同候補者の届出順位を示す「2」の数字等の表示のある証紙三枚及びその拡大写真を受取り、これにより作成した地紋部分と文字部分を分離した各図案を準備し、被告人入倉が同年四月五日頃までに版下製作業者に依頼して、右各図案を実物証紙大に縮少した凸版下原稿を作成させた。一方被告人永里において同月六日頃までに、右地紋部分及び文字部分の各版下原稿により、製作業者に依頼して各一六面の亜鉛版を作成させ、それぞれ印刷偽造に必要な準備を整えたうえ、被告人入倉が同月六日頃、前記教潤社に赴いて、右各亜鉛凸版による証紙の印刷を注文依頼し、同日頃から翌七日頃までの間に、予め用意してあつたA模造紙約一、六〇〇枚に印刷させて「福岡県選管」の文字及び候補者届出順位を示す「2」の数字等を表示する証紙約二万五〇〇〇枚を作成し、もつて公務所である福岡県選挙管理委員会の前記記号を偽造したものである。

第二、被告人森本らに対する買収

一、被告人松崎は、前記東京都知事選挙に際し、前記東竜太郎に当選を得しめる目的をもつて、いずれも前記自由民主党の資金の中から

(一) 東候補の選挙運動者である被告人森本に対し、同候補者のため有利な記事掲載及びいわゆる三業界方面に対する投票取りまとめ等の選挙運動を依頼し、その報酬等として

(1) 同年二月下旬頃、前記自由民主党本部において、現金三万円

(2) 同年三月上旬頃、同所において、現金一〇万円

(3) 同月二四日頃、同所において、現金一〇万円

(4) 同年四月上旬頃、同所において、現金五万円

(5) 同月一二日頃、同所において、現金五万円

を各供与し

(二) 東候補の選挙運動者である被告人坂戸に対し、同候補者のため婦人団体等における投票取りまとめ等の選挙運動を依頼し、その報酬等として

(1) 同年三月初頃、前記自由民主党本部において、現金二二万円

(2) 同年四月初頃、同所において、現金二二万円

(3) 同月一二日頃、同所において、現金一五万円

を各供与し

(三) 同年四月八日頃、前記自由民主党本部において、東候補の選挙運動者である被告人飯田に対し、前記第一、(一)、(2)の法定外文書頒布等の選挙運動をなすことの報酬等として、現金二五万円を供与し

二、被告人森本は、前記第二、一、(一)記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら

(一) 同年二月下旬頃、前記自由民主党本部において、現金三万円

(二) 同年三月上旬頃、同所において、現金一〇万円

(三) 同月二四日頃、同所において、現金一〇万円

(四) 同年四月上旬頃、同所において、現金五万円

(五) 同月一二日頃、同所において、現金五万円

の各供与を受け

三、被告人坂戸は、前記第二、一、(二)記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら

(一) 同年三月初頃、前記自由民主党本部において、現金二二万円

(二) 同年四月初頃、同所において、現金二二万円

(三) 同月一二日頃、同所において、現金一五万円

の各供与を受け

四、被告人飯田は、前記第二、一、(三)記載の日時場所において、同記載の趣旨で供与されるものであることを知りながら、現金二五万円の供与を受け

たものである。

第三、東京都庁内紙関係者らに対する買収

(右買収に至る経過)

庁内紙は、都政関係のニユース速報紙として都庁内に取材室を与えられ、日刊紙、週刊紙、旬刊紙等合せて二〇数社あり、都庁各局、出先機関、外郭団体、都議会関係者等を主たる購読範囲とし、発行部数は一回につきそれぞれ二〇〇〇部ないし七〇〇〇部程度のものであつた。被告人松崎は、前記東京都知事選挙を迎えるに当り、現職知事である東竜太郎及びその側近者が、前任知事当時に比し、右庁内紙経営者らに対する応待を円滑に行なわず、かえつて疎遠な態度に終始していた等の理由から、庁内紙関係者の間には東候補に対し不満感を懐いているものもあつて、必ずしも東支持の態勢が確立していないことを知るに及び東候補に対する不満を一掃させるとともに、庁内紙関係者間に東支持の態勢を確立させ、ひいてはこれを庁内紙紙面に反映せしめて東都政の宣伝と人気盛り上げを図る必要があると考え、庁内紙関係者に対する働きかけの機会を待つていたところ、たまたま昭和三八年一月下旬頃、中央区銀座四丁目小野ピアノ店で行われた東竜太郎後援会の事務所開きの席上、被告人松尾と会うや、前回の東京都知事選挙の際にも、同被告人に依頼して右意図の如き選挙運動を展開したことがあつたところから、同被告人に対し、「今度の都知事選挙にもよろしく協力願いたい」旨依頼し同被告人もこれを承諾し、かくして庁内紙関係者らに対し順次左記の如き買収が行われるに至つた。

一、被告人松崎は、前記東竜太郎に当選を得しめる目的をもつて、いずれも前記自由民主党本部の資金の中から、

(一)  同年二月一二日頃、台東区浅草柳橋一丁目二番地料亭「小安」において、いずれも東候補の選挙運動者である被告人野々上、同松尾、及び田中勝治に対し、同候補者のため、選挙情報の提供及び有利な記事掲載等の選挙運動を依頼し、その報酬として各現金一〇万円を供与し

(二)  同月一四日頃、前記自由民主党本部において、被告人松尾、同様東候補の選挙運動者である被告人原及び右田中に対し、同候補者のため有利な記事掲載等の選挙運動及び同旨の選挙運動をなすよう前記丸の内倶楽部所属各庁内紙発行者に働きかけられたき旨を依頼し、その報酬及び買収資金として現金五〇万円を供与し

(三)  同月下旬頃、右自由党本部において、右田中に対し、同人がその発行する「都政通信」同月二六日付知事選挙第二報(発行部数約六〇〇〇)において、東候補のため有利な記事を掲載したところから、これが配布方及び将来も同様有利な記事掲載等の選挙運動をされたき旨依頼し、その報酬等として、現金一〇万円を供与し

(四)  同年三月五日頃、千代田区丸の内一〇番地富士製鉄ビル二階レストラン「常盤家」において、東候補の選挙運動者である被告人小池に対し、同候補者のため有利な記事掲載等の選挙運動等を依頼し、その報酬として現金三万円を供与し、同時に被告人小池、同松尾に対し被告人石切山ほか六名の庁内紙関係者が同旨の選挙運動をなすことに対する報酬として供与すべき現金二一万円を交付し

(五)  同月一二日頃、右自由民主党本部において、被告人松尾に対し、前記東京都新聞連盟所属の地方新聞経営者らに、東候補のため記事掲載等につき有利な取扱いをなすよう働きかけられたき旨選挙運動を依頼し、その報酬及び買収資金として現金二〇万円を供与し

(六)  同月一九日頃、前記料亭「小安」において、被告人松尾、同様東候補の選挙運動者である被告人田村及び河野通夫に対し、同候補者のため有利な記事掲載等の選挙運動等を依頼し、その報酬等として

(1) 同月二〇日頃、前記自由民主党本部において、被告人松尾に現金一五万円

(2) 同月二一日頃、同所において、被告人田村に現金一〇万円

(3) 同二三日頃、同所において、柏木千春を介し右河野に現金一〇万円

(4) 同年四月八日頃、同所において、右河野に現金一〇万円をそれぞれ供与し

(七)  同年四月上旬頃、前記自由民主党本部において、被告人野々上に対し、東候補のための選挙演説及び選挙情報の提供等の選挙運動を依頼し、その報酬等として現金三万円を供与し

(八)  同月七日頃、前記自由民主党本部において、被告人松尾に対し、東候補のため有利な記事掲載等の選挙運動等を依頼しその報酬として現金五万円を供与し、同時に前記丸の内倶楽部所属の庁内紙発行者被告人原文雄ほか八名が同旨の選挙運動をなすことに対する報酬として供与すべき現金二一万円を交付し

二、被告人野々上は、被告人松崎から

(一)  前記第三、一、(一)記載の日時場所において、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら現金一〇万円の供与を受け

(二)  前記第三、一、(七)記載の日時場所において、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金三万円の供与を受け

三、被告人松尾は

(一)  前記第三、一、(一)記載の日時場所において、被告人松崎から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら現金一〇万円の供与を受け

(二)  前記第三、一、(五)記載の日時場所において、同被告人から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら現金二〇万円の供与を受け

(三)  前記第三、一、(六)、(1)記載の日時場所において、同被告人から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら現金一五万円の供与を受け

(四)  前記第三、一、(八)記載の日時場所において、同被告人から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら現金五万円の供与を受け

(五)  東候補に当選を得しめる目的をもつて、同年四月八日頃、千代田区丸の内三丁目一番地東京都庁内丸の内記者倶楽部において、いずれも同候補者の選挙運動者である被告人原、同横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同今、同笹部に対し、同候補者のため記事掲載につき有利な取扱いをなす等の選挙運動の報酬として、松尾茂留を介し被告人原に現金二万八〇〇〇円、同被告人を介し爾余の被告人らに各現金一万八〇〇〇円を供与し

四、被告人松尾、同原は田中勝治と共謀のうえ

(一)  前記第三、一、(二)記載の日時場所において、被告人松崎から同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら現金五〇万円の供与を受け

(二)  東候補に当選を得しめる目的をもつて、別紙一覧表(三)記載の日時場所において、いずれも同候補者の選挙運動者である被告人横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同今、同笹部、同木村及び河野通夫に対し、同候補者のため記事掲載につき有利な取扱いをなす等の選挙運動の報酬として、同表記載の各現金を供与し

五、被告人横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同今、同笹部、同木村はそれぞれ別紙一覧表(三)記載の日時場所において、被告人原ほか二名から、右記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら同表記載の各現金供与を受け

六、被告人原、同横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同今、同笹部は前記第三、三、(五)記載の日時場所において、被告人松尾から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、被告人原は松尾茂留を介し現金二万八〇〇〇円、爾余の被告人らは被告人原を介し各現金一万八〇〇〇円の供与を受け

七、被告人小池は前記第三、一、(四)記載の日時場所において、被告人松崎から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら現金三万円の供与を受け

八、被告人小池、同松尾は共謀のうえ、東候補に当選を得しめる目的をもつて、前記第三、一、(四)記載の日時場所において、いずれも同候補者の選挙運動者である被告人石切山、同松本、同石川、同吉留及び鴫原和夫、高月哲、五十嵐聖に対し、同候補者のため記事掲載につき有利な取扱いをなす等の選挙運動の報酬として各現金二万円を供与し

九、被告人石切山、同松本、同石川、同吉留は、右記載の日時場所において、被告人小池、同松尾から、右記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、各現金二万円の供与を受け

一〇、被告人田村は、前記第三、一、(六)、(2)記載の日時場所において、被告人松崎から、同記載の趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金一〇万円の供与を受け

たものである。

第四、法定外文書である葉書の頒布

被告人松崎、同三沢は共謀のうえ、前記東京都知事選挙に際し、東候補のため法定枚数を超える選挙運動用葉書を頒布することを企て、肥後享から譲り受けた肥後享事務所々属候補者の選挙運動用通常葉書一一万枚に、「都知事にはまじめな人格者を」なる標題のもとに「都知事は、まじめな品位のあることが第一である。都内いたるところで史上空前の都市づくりがはじまつているが、都民税を収めたことなく、都政を知らない人では、この大事業を進めることができず、はつたりや思いつきでは都政はやれない。本当に東京を愛し、どこに出しても恥しくない立派な知事を選ばねばならぬ」旨、暗に候補者阪本勝を排撃してその対立候補者である東竜太郎に当選を得しめねばならない趣旨を印刷したうえ、同年四月一四日及び同月一六日の二回にわたり、右葉書のうち約一〇万七〇〇〇枚を、千代田区丸の内二丁目三番地東京中央郵便局から、文京区駒込富士前町二九番地品川敏雄ほか約一〇万七〇〇〇名に郵送して法定外文書を頒布したものである。

第五、東京都知事選挙における肥後に対する買収

被告人松崎は、前記東京都知事選挙に際し、東候補に当選を得しめる目的をもつて、同候補者の選挙運動者である肥後享に対し

一、同年三月二五日頃、千代田区永田町二丁目一番地東京グランドホテルにおいて、同候補者のための選挙運動をなすことの報酬として現金五〇万円

二、同年四月一日頃、同所において、同趣旨のもとに現金一〇万円

三、同月八日頃、同所において、同趣旨のもとに現金一〇万円

四、同月一六日頃、前記砂防会館前路上において、同候補者のために、選挙運動をなしたことに対する報酬として現金五万円

を各供与したものである。

第六、千葉県知事選挙における肥後に対する買収

一、被告人根本、同松崎は共謀のうえ、前記千葉県知事選挙に立候補した加納久朗に当選を得しめる目的をもつて、昭和三七年九月下旬頃、前記グランドホテル内において、同候補者の選挙運動者である肥後享に対し、同候補者のため選挙運動をなすことの報酬等として現金一〇〇万円を供与し

二、被告人根本は、同年一一月二日頃、千代田区永田町二丁目一番地内閣総理大臣官邸内において、右肥後に対し、同人が右候補者のため選挙運動をなしたことに対する報酬として現金一〇〇万円を供与し

たものである。

(証拠の標目)(略)

(各弁護人及び被告人の主張に対する判断)

一、被告人飯田は証紙偽造には関与しなかつたとの主張について。

同被告人は、検察官の取調に際しては、判示証紙を偽造することについては、都知事選挙の告示のあつた日に被告人松崎より情を打ちあけられた旨自供しているが、当公判廷においてはこれを翻し、四月六日頃、偽造証紙の見本をみせられて初めて松崎らが偽造をしていることを知つた旨弁疎している。しかし、被告人木下、分離前相被告人石井らの当公判廷における各供述及び検察官に対する各供述調書によれば、

(1)  被告人飯田は三月二四日、松崎に持参方を依頼された証紙一シートを木下から受取る際、写真をとるような真似をして見せたこと、(この点については、被告人木下は、当公判廷において、これを否定しているが、その内容から考えて、同被告人の検察官に対する供述が誘導等によるものとは思われない。)

(2)  右の一両日後、被告人飯田は木下に対し面白い計画をしている旨を話していること、

(3)  石井は三月二七、八日頃、被告人飯田が「今度の選挙は汚ない選挙だからいやになつてしまう、いやなことばかり押しつけられる」旨洩らしたのを聞いていること、

(4)  三月末頃には、木下も石井も被告人飯田から偽証紙を作つていることを聞かされていること

等の事実が認められるのであつて、これらの事実に、被告人松崎、同飯田の検察官に対する各供述調書を綜合して考えると、被告人飯田は判示のとおり、松崎に偽造に使うための証紙一シートを届けた時には、既に証紙偽造の情を明かされこれに賛成していたことを認めるに十分である。法律的には共同正犯とみるのが相当である。

二、被告人坂戸が受けた各金員の趣旨は、いずれも「女性の年鑑」出版に対する助成金であるとの主張について。

同被告人も、検察官の取調に際しては、本件金員を判示認定の趣旨で受取つたものである旨自供しているが、当公判廷においては、右金員は、選挙運動とは関連なく専ら右助成金として受取つたものである旨弁疎し、被告人松崎もこれにそう供述をしている。しかし、関係証拠によれば(関係被告人の検察官に対する供述調書を除く、以下同じ)

(1)  被告人坂戸は判示金員を受けるに先立ち、松崎に東候補のための選挙運動に協力する旨申し入れ、その結果、松崎からその旨依頼され、東後援会事務所、選挙告示後は東候補選挙事務所に出入りし、婦人団体関係者に電話などで投票依頼をする等の選挙運動を行つたこと、

(2)  被告人坂戸が昭和三六年四月前記婦人問題研究所発行の昭和三六年度版「女性の年鑑」出版に当り、自由民主党本部から出版助成金を貰い受けたことはあるが、その際は、同本部事務局の当該事務担当係員に申し入れ、同係員を通じて受領したもので、その金額も五万円程度であり、これまで直接松崎に申入れをしてこの種金員を貰い受けたことはないこと等の事実が認められ(以上の事実は被告人坂戸も当公判廷において争つていない。)、これらの事実及び判示金員受領の時期、その金額、これが三回にわたつて手交された点、受領に際し作成した領収書の記載内容等に、被告人松崎、同坂戸の検察官に対する各供述調書を照し考えると、右被告人両名の検察官に対する自供は真実を述べたものと認めるに十分である。すなわち被告人松崎は、被告人坂戸の婦人界における地位を考え、これを選挙に利用しようとし、選挙運動の報酬として判示金員を供与したものであり、被告人坂戸もその趣旨で供与されるものであることを知りながらこれを収受したものであることが明らかである。

三、被告人森本が受けた各金員の趣旨は、いずれも業界紙「朝日タイムス」の経営賛助金であるとの主張について。

関係証拠によると、

(1)  被告人森本は判示偽造ポスターを頒布したり、三業組合関係者の会合において東候補推せんの挨拶をする等いわゆる三業界方面に対して相当広く選挙運動を行つたこと、

(2)  同被告人がこれまで松崎を通じて受けていた恒例の賛助金としては、年間二、三万円程度のものに過ぎなかつたこと、

(3)  被告人森本は、本件受領金員を、新聞経営面の費用には当てておらず、うち少額を前記ポスターの配布先に供与したほか、大部分は交際費、生活費等に消費していること、

等の事実が認められるのであつて、以上の事実は被告人森本も当公判廷においてこれを争つていない(なお最初の三万円については、広告料であるとの主張もあるけれども、「朝日タイムス」紙上に東知事の年頭の挨拶を載せ、その広告料を自民党本部が支払うことも肯けないし、時期的にもずれている。)。以上の事実に本件金員受領の時期、その額、これが短期間内に五回にわたつて手交されている点、更に被告人松崎も、当公判廷において、被告人森本に対する判示金員の供与が、同人の党への貢献ということを考慮した点もあるが、結局は、選挙運動及び選挙情報提供の報酬の性質をも持つものであることを認めていること等を併せ勘案すると、被告人松崎、同森本の検察官に対する各供述調書の内容は真実にそうものであつて、被告人森本が判示趣旨で供与されるものであることを知りながら、本件各金員を収受したものであることは明白である。

四、被告人飯田が受けた金員の趣旨は、東候補応援弁士日程表作成等の党活動に要した実費が主である旨の主張について。

同被告人も検察官の取調に際しては、本件金員を判示趣旨で受取つた旨自供しているが、当公判廷においては、右主張の如く弁疎するに至つている。しかし、関係証拠によれば、

(1)  同被告人は当公判廷において始めて右の如き応援弁士スケジユール作成のための自動車代等の実費ということを主張するに至つたものであるばかりでなく、正確な実費計算に基いて本件金員を貰いうけたものでないこと、

(2)  被告人飯田は、判示第一の通り松崎から偽造証紙をポスターに貼付する作業及びその頒布のことを依頼されていたこと、

(3)  本件金員は同被告人が前記石井らに依頼して偽造証紙の貼付作業にとりかかつていた四月八日頃手交されたものであり、同被告人はその金員のうちから右石井ら五名に対し五〇〇〇円宛与えていること、

(4)  被告人飯田は右金員のうち、七万円を同月一三日郵便貯金していること(なお収受金員のうち五万円を妻に渡した旨当公判廷で供述している。)

等の事実が認められるのみならず(右のうち(4)を除き、被告人飯田は当公判廷においても争つていない。)被告人松崎自身当公判廷において、被告人飯田に遊説プランの作成を依頼してあり、それには相当車代のかかるということもあつたが、他に偽証紙貼付の件をたのんだこと、街頭ポスターの移動戦術のことを依頼したことその他選挙について世話になつていてかねがね気になつていたから、この際と思い多い目に出した旨供述しているのであつて、これらの事実に、被告人松崎、同飯田の検察官に対する各供述調書を併せ考えると、判示金員は、被告人松崎が判示趣旨で被告人飯田に供与し、被告人飯田は判示趣旨で供与されるものであることを知りながらこれを収受したものであること明白である。

五、庁内紙関係被告人らが受けた金員の趣旨等についての各主張について。

(一)  被告人今、同野々上を除く爾余の関係被告人らが本件各金員の趣旨につき当公判廷で述べるところをみると、自由民主党幹部との懇談会に出席した際の車馬賃とするもの、経営賛助金を含む車馬賃とするもの、純粋の経営賛助金とするもの、購読料を含む賛助金とするものがあつて区々であるが、要するに、後援者等よりこの種新聞関係者に慣例的に贈与提供されている性質の金員に属するもので、選挙運動とは全く関連のないものである旨弁疎するに帰する。

ところで、関係証拠によると

(1) 判示第三、冒頭記載の如き事情から当時、庁内紙関係者の間に東知事に対する不満を抱くものが多く、本件東京都知事選挙を迎えるに当り、庁内紙関係者を右のままにしておくことは、東候補側にとつて得策でない状態にあつたこと、

(2) 判示各金員授受の経過は次の如くであつたこと、すなわち、先づ、庁内紙のうちでも規模が大きく発言力の強い松尾、野々上、田仲の三名と松崎との懇談の席が料亭「小安」に設けられ、席上判示第三、一、(一)の金員が渡され、次で庁内紙のクラブのうち組織の大きく、松尾が幹事をしていた丸の内クラブ会員と、当時自民党総務会長で同党東京都知事選対本部長であつた赤城宗徳、中村梅吉、都議会議員らとの懇談の席が料亭「常盤家」に設けられることとなり、その直前松崎から松尾、原らに判示第三、一、(二)の金員が渡され、右会解散直後出席者に判示第三、四、(二)の金員が分けられ、次いで庁内紙の別派都政記者会会員と右同様の席が同所で設けられ、同様赤城宗徳が出席し、解散後同所で判示第三、一、(四)の金員が渡され、更に告示近い頃庁内紙中の日刊紙経営者松尾、河野、田村の三名と松崎との懇談の席が前記「小安」に設けられ、直後同人らに判示第一、一、(六)の金員が渡され、また告示後丸の内クラブ会員に対し重ねて判示第一、一、(八)の金員が渡されていること、

(3) 右丸の内クラブおよび都政記者会との各懇談会の席上、赤城、中村ら、または赤城から、挨拶があり、東都政が建設的に進められていること、或は都政に対する批判は宣伝不足によるものであること、その他都知事選挙の情勢判断等について話が交されたこと、

(4) これまで自由民主党本部としては、庁内紙経営者全般に対して恒例的に経営賛助金を支出していたことはなく、被告人原、藤井、今、松本らの一部のものに、個別的に毎年盆、暮の二回、五、〇〇〇円ないし二万円程度の賛助金名義の金員を支出しているに過ぎないこと、

(5) 被告人らは従来自由民主党本部に、その発行する新聞をそれぞれ数部宛送付していたが、いずれも購読契約を締結しておらず、いわゆる「贈呈」していたに過ぎないところから、これまで購読料を受取つた事例がなかつたこと

等の事実が認められるのであつて((2)、(4)、(5)については関係被告人らも当公判廷において争つていない。)、これらの事実及び金員授受の時期、金額等に被告人松崎及び関係各被告人の検察官に対する各供述調書を綜合検討すると、被告人松崎は判示趣旨で各金員を供与・交付し、被告人松尾、同原、同横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同笹部、同木村、同小池、同石切山、同松本、同石川、同吉留、同田村はいずれも、それぞれ判示各趣旨で供与されるものであることを知りながら、当該各金員を受取つたものと認めるに十分である。

(二)  被告人今は、当公判廷において、右常盤家での懇談会には出席していない。判示第三の五の二万円は丸の内クラブ所属の庁内紙関係者からの病気見舞金と思い込み、判示第三の六の一万八〇〇〇円は丸の内クラブの旅行会に病欠したため旅行準備金の返却を受けたものと思い込んで、それぞれ受取つたものである旨弁解する。しかし、関係証拠によると、

(1) 右丸の内クラブの規約により、クラブ員が一ヶ月以上入院した場合支給される見舞金額は三、〇〇〇円と定められていること。

(2) 被告人今が入院したのは四月四日のことであつて、判示二万円を受取つた時はまだ入院していなかつたこと、

(3) 同被告人は判示懇談会のあつた際遅れて行き、常盤家の階段附近で、帰りがけの赤城、中村らに会つたが、その際中村から今度の選挙で、自民党の悪口をあまり書くなよと言われていること、

(4) 判示金員を原から受取る前、懇談会の模様を丸の内クラブで聞き知つていること、

(5) 原は被告人今に二回目の一万八〇〇〇円を渡す際、松尾が党本部から貰つて来た金であることを話していること、

(6) 昭和三七年一一月丸の内クラブの旅行会が催された際、被告人今が欠席したため、当時同クラブから同人に対し現金一万円及び土産品が贈られたことがあるが、その後は旅行会の催しはなかつたこと

等の事実が認められ、右(1)から(5)までの事実については、被告人今も当公判廷においてこれを争わないのみならず、更に「丸の内クラブで被告人田仲から三万円貰つたかと聞かれ、その後被告人原から二万円を渡されて、ずい分馬鹿にしているなという気持を持つた」旨供述しているのであつて、これらの事実に被告人松尾、同原、同今の検察官に対する各供述調書を綜合すると、被告人今が判示各金員を、その主張の如き趣旨で受取つたものとは到底認められず、判示趣旨で供与されるものであることを知りながらこれを受取つたものであること明らかである。

なお、被告人今が、赤城らが帰つた後、懇談会の席へ顔を出したことは、被告人原の当公判廷における供述、常盤家の宴会指示表(昭和三八年押第一〇三号の一八一)、売上伝票(同号の一八二)の記載、関係相被告人らの検察官に対する各供述調書、被告人今の検察官に対する供述調書等によつて、これを肯認しうるのみならず、右事実の有無は判示認定に影響するものではない。

(三)  被告人野々上の主張は必ずしも明確でないが、要するに(イ)判示一三万円は自己が主宰する政治資金規正法上の確認団体首都擁護刷新連盟に対する寄付金である。(弁護人はこの点一〇万円のみが寄付金であると主張する。)。(ロ)同被告人は、自民党の「地方選挙対策委員会委員」であり、「自民党特派弁士」でもあつて、右一三万円は、党活動を行なうための旅費その他実費の前渡金として受取つたものである。すなわち一〇万円は、阪本候補の兵庫県知事時代の実績調査の取材旅行の費用の前渡金であり、三万円は自民党公認都議会議員候補者応援演説に赴く交通費等の実費である。(ハ)東候補のための選挙運動はしていない、というに帰する。しかし関係証拠によると

(1) 首都擁護刷新連盟が、右規正法に基き、東京都選挙管理委員会に対し、昭和三七年一月一日以降昭和三八年一二月三一日までの収支報告書を提出し、これに本件一三万円の金員を、寄付金として記載届出をしていることは認められるが、右報告書の提出されたのは、本件起訴後のことであり(たとえ、それが法定の期間内の届出であつても、証拠価値の乏しいものたることは否定できない。)、また、同連盟は右期間中他に、外部の団体・個人から金員の寄付を受けた事実がないこと、

(2) 判示第三、二、(一)の一〇万円は、被告人野々上が被告人松尾、田仲とともに松崎と会合をした席上、松崎から松尾、田仲と同一機会に受領したもので金額も同じであること、(被告人松崎は、当公判廷において被告人野々上の兵庫県取材行の費用を提供したことを否定している。)

(3) 被告人野々上はその主張の如く自民党特派弁士として都議会議員候補者のため、多数回応援演説に廻つていたが、右の機会に同時に東候補を推せんする旨の演説も行つていたこと、

(4) 被告人野々上は松崎に対し本件都知事選挙に関する都議会議員の動向等選挙情報を提供していたこと、

(5) 判示第三の二、(二)の三万円は、実費計算に基いて請求受領したものではないこと

等の事実が認められるのであつて、これらの事実に被告人松崎、同野々上の検察官に対する各供述調書その他前掲関係証拠を綜合検討すれば、被告人野々上は判示各金員をその主張のような寄附金或いは実費のみとして受領したものではなく、判示各趣旨で供与されるものであることを知りながらこれを収受したものであることを認めるに十分である。

(四)  なお、被告人松崎について、被告人坂戸、森本その他庁内紙関係被告人らに対する金員の供与、交付は、党活動の一環としてなしたものであつて、選挙運動ではない、従つて右金員は選挙買収費ではない旨の主張がある。しかし、政党が単にその政策を宣伝し、党勢を拡張する等のための活動をすること自体は、選挙運動でないこと言うまでもないが、特定の選挙につき、特定の候補者に当選を得しめることを目的としてなす行為は、政党関係者がこれをなす場合といえども、選挙運動たることは勿論である。被告人松崎の本件所為は、東京都知事選挙につき、東候補の当選を得しめることを目的としたものであること前掲証拠によつて明白であつて、選挙運動たること多言を俟たない。到底単なる党活動に止まるものと見ることはできない。従つて本件金員の趣旨は単なる団体対策費ではなく、選挙買収費たること明らかである。その資金が、党の会計から団体対策費等として支出されたかどうかは、授受金員の性質を左右するものではない。

なお、右被告人らにつき、本件金品授受は政治慣行に基く正当行為である旨の主張もあるが、たとえこれまでにも選挙間近に党関係者から然るべき団体等に金員の交付がなされたことがあつたとしても、それが本件と同じく選挙運動の報酬として授受されたものであれば、違法たること言うまでもなく、かかる違法な行為が繰返えされたとてこれを政治慣行として適法と見ることは許されないし、それによつて本件行為を正当視することはできない。

(五)  庁内紙関係被告人らの行為は、報道・評論の自由の範囲内にある行為であつて、選挙運動ではないとの主張について。

特定の選挙につき、特定の候補者に当選を得しめる目的をもつて、新聞、雑誌に選挙に関する報道・評論を掲載することは、実質において選挙運動たること明らかであるが、公職選挙法は、社会の公器としての新聞紙及び雑誌の報道及び評論の自由を尊重して一般の選挙運動の制限に対する特例を設けたものである(同法一四八条)。しかし、この報道・評論の自由は、無制限でないことはいうまでもない。同条二項は「虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない、」と規定しているのであつて、報道・評論の自由も、いやしくもそれが濫用にわたる場合は許されないこと当然である。従つて選挙に関する報道・評論に関し、金銭その他の利益を供与しまたはこれを収受することの許されないことも言うまでもなく、かかる場合は既に報道・評論の自由の規定による保護を受け得ないものと解すべく、買収罪を構成すること明らかである。

(六)  庁内紙関係被告人らは選挙運動者ではないとの主張について。

公職選挙法二二一条等にいう選挙運動者とは、選挙運動を依頼されたうえ金員を供与され、これを了知して金員を収受した者をも含むものたること勿論であつて、本件金員が選挙運動の報酬たる以上、被告人らは選挙運動者と認められる事は当然である。

六、東京都知事選挙の際の肥後に対する買収について。

被告人松崎は、判示第五の各金員につき、一の金員は、肥後が前回の都知事選挙の際の違反によつて刑を受けた見舞金である、二及び三の金員は肥後からのいやがらせでやむなく出したものである、最後の金は私的な貸金である旨主張している。しかし、肥後も被告人松崎も検察官に対する供述調書においてはその趣旨が判示の如くであることを認めている。のみならず、関係証拠によれば、

(1)  被告人松崎らは判示第四の通り、肥後から選挙用の葉書を譲受け、これを利用して同判示の如き文言を印刷のうえ頒布していること、

(2)  被告人松崎らは肥後事務所の使用すべきステツカーおよび宣伝カー等を借り受けて東候補の選挙運動のため使用していること、

(3)  被告人松崎は、四月九日頃以降肥後事務所々属候補者高田厳らがなした阪本候補攻撃の演説の原稿を書いていること、

等の事実が認められるのであつて、これらの事実に被告人松崎、肥後の検察官に対する各関係供述調書その他前掲関係証拠を綜合勘案すれば、肥後は被告人松崎と密接な関係を保ちつつ東候補のための選挙運動を行つたことが明白であり、被告人松崎が肥後に供与した判示金員の趣旨も判示通りのものであることを認めるに十分である。

七、千葉県知事選挙における肥後に対する買収について。

被告人根本も、同松崎も検察官に対しては、肥後に供与した金員がそれぞれ判示認定の如き趣旨のものであることを認めているが、当公判廷においては、これを翻し、被告人根本は、判示第六、(一)の一〇〇万円は、肥後に対する千葉県知事選挙立候補の陣中見舞、或はつきあいとして出したものであり、同(二)の一〇〇万円は加納知事の依頼により、肥後の同知事との縁切り金として渡したものであつて、いずれも川島正次郎の秘書官としての立場上なしたものである旨主張し、被告人松崎は、前者について、取次いだだけだと弁解している。

しかし、関係証拠によれば、

(1)  昭和三七年一〇月施行の千葉県知事選挙は、四選を狙う現職知事の柴田候補と自民党公認の加納候補との争いで、加納候補として、必ずしも楽観を許さぬ情勢であつたこと、ところが千葉県第一区は川島の選挙区であり、加納は川島らの支持で党公認となつたものであるから、その当落は川島にとつても重大であり、被告人松崎は、川島から右知事選挙において加納を応援することを頼まれたこと、

(2)  被告人松崎は、肥後が右選挙に立つらしいと聞いて肥後に会つたところ、同人は柴田の四選阻止の運動をする旨述べていたこと、その頃肥後から選挙運動の費用として一〇〇万円位ほしい旨言われていたこと、

(3)  肥後は被告人松崎から一〇〇万円を受領後同人と組んで加納候補のための種々の選挙運動ないし工作を行なつたこと、

(4)  被告人根本は、川島から、肥後が千葉県知事選挙もやる旨聞いており、また松崎が川島から右選挙について加納候補の応援を頼まれたことも知つていたこと、根本は、秘書として、これまで選挙の際、他党の候補者に一〇〇万円という多額の金員をおつきあい、陣中見舞などとして支出したことはないこと、右選挙後肥後から加納が当選したから挨拶せよと金員の要求を受けていたこと、

等の事実が認められるのみならず、被告人根本の、右選挙後加納知事から、「肥後から報酬金を要求されているが、肥後とは縁を切りたいから金をやつてほしい旨」依頼を受けていたとの主張は、同被告人の供述以外これを認むべき証拠がなく、かえつて、証人向井十郎(当時の千葉県総務部主幹、秘書課勤務)の当公判廷における供述によれば、肥後は、根本から一〇〇万円を受領した後、初めて加納に対し選挙の応援をした報酬の意味で餠代を要求し、向井を通じ十二月十七日頃一〇万円を貰つていることが明らかであつて、これらの諸事実に、被告人松崎、同根本の各検察官に対する供述調書、肥後享の検察官に対する供述調書を併せ検討すると、判示第六の肥後に対し二回にわたつて供与された二〇〇万円は、判示通りの趣旨の金員であり、(一)の一〇〇万円は右被告人両名共謀によるものであることが明白である。

(確定裁判)

被告人田村忠義は、昭和三六年二月二七日大阪地方裁判所において、公職選挙法違反の罪により懲役六月に処せられ、これに対し控訴、更に上告したが、昭和三八年一二月二五日上告棄却となり右裁判が確定したことは、同被告人の前科調書によつて認められる。

(法令の適用)

一、(適条)被告人松崎、同三沢、同飯田、同永里、同入倉の判示第一の一、(一)、(1)、被告人三沢、同永里、同入倉の判示第一の二の各所為は、それぞれ包括して刑法第一六六条第一項、第六〇条に、被告人松崎、同三沢、同飯田、同福岡の判示第一の一、(一)、(2)の所為中、各偽造公記号使用の点は包括して同法第一六六条第二項、第六〇条に、法定外文書頒布の点は公職選挙法第一四二条第二四三条第三号、刑法第六〇条に、被告人木下の判示所為中、偽造公記号使用幇助の点は包括して刑法第一六六条第二項、第六二条、第六〇条に、法定外文書頒布幇助の点は公職選挙法第一四二条、第二四三条第三号、刑法第六二条、第六〇条に、被告人松崎の判示第二の一、第三の一、(一)、(二)、(三)、(五)、(六)、(七)、第五、被告人松尾の判示第三の三、(五)、被告人松尾、同原の判示第三の四、(二)、被告人小池、同松尾の判示第三の八、被告人根本、同松崎の判示第六の一、被告人根本の判示第六の二の各所為は、それぞれ公職選挙法第二二一条第一項第一号(第三の四、(二)及び八、第六の一についてはさらに刑法第六〇条)に、被告人森本の判示第二の二、被告人坂戸の判示第二の三、被告人飯田の判示第二の四、被告人野々上の判示第三の二、被告人松尾の判示第三の三、(一)、(二)、(三)、(四)、被告人松尾、同原の判示第三の四、(一)、被告人横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同今、同笹部、同木村の判示第三の五、被告人原、同横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同今、同笹部の判示第三の六、被告人小池の判示第三の七、被告人石切山、同松本、同石川、同吉留の判示第三の九、被告人田村の判示第三の一〇の各所為は、それぞれ公職選挙法第二二一条第一項第四号(第三の四、(一)についてはさらに刑法第六〇条)に、被告人松崎、同三沢の判示第四の各所為は公職選挙法第一四二条、第二四三条第三号、刑法第六〇条にそれぞれ該当し、被告人松崎の判示第三の一、(四)、(八)の各所為中、供与の点は公職選挙法第二二一条第一項第一号に、交付の点は同項第五号に該当するが、右はそれぞれ包括一罪の関係にあると認められるから、いずれも刑法第一〇条により犯情の重い供与罪の刑によるべきところ、被告人松崎、同三沢、同飯田の判示第一の一、(一)、(1)の公記号偽造と同(一)、(2)の偽造公記号使用とは互に手段結果の関係にあり、且つ右被告人三名及び被告人福岡の右偽造公記号使用と法定外文書頒布とは一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五四条第一項後段(被告人福岡については除く)、前段、第一〇条により最も重い偽造公記号使用罪の刑に従い、被告人木下の偽造公記号使用幇助と法定外文書頒布幇助とは一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、同法第五四条第一項前段、第一〇条により重い偽造公記号使用幇助罪の刑に従い、被告人松崎の判示第四の公職選挙法違反(法定外文書頒布)罪を除く右各公職選挙法違反罪、被告人松尾、同原、同小池、同根本、同森本、同坂戸、同飯田、同野々上、同原、同横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同笹部、同田村の右各公職選挙法違反罪につき所定刑中各懲役刑を、被告人松崎、同三沢の判示第四の公職選挙法違反罪につき所定刑中各禁錮刑を、被告人今、同木村、同吉留、同石切山、同石川、同松本の右各公職選挙法違反罪につき所定刑中各罰金刑を選択し、被告人木下の右罪は、従犯であるから刑法第六三条、第六八条第三号により法定の減軽をし、被告人松崎、同三沢、同飯田、同永里、同入倉、同森本、同坂戸、同飯田、同松尾、同野々上、同原、同横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同今、同笹部、同小池、同根本の以上の罪は、それぞれ刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条、第一〇条により、被告人松崎、同三沢、同飯田に対しては重い偽造公記号使用罪の刑に、被告人永里、同入倉に対しては重い判示第一の一、(一)、(1)の公記号偽造罪の刑に、被告人森本に対しては重い判示第二の二、(二)の公職選挙法違反罪の刑に、被告人坂戸に対しては重い判示第二の三、(1)の公職選挙法違反罪の刑に、被告人野々上に対しては判示第三の二、(一)の公職選挙法違反罪の刑に、被告人松尾、同原に対してはそれぞれ重い判示第三の五、(一)の公職選挙法違反罪の刑に、被告人横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同笹部に対してはそれぞれ重い判示第三の六の公職選挙法違反罪の刑に、被告人小池に対しては判示第三の七の公職選挙法違反罪の刑に、被告人根本に対して判示第六の(一)の公職選挙法違反罪の刑に法定の加重をし、被告人今に対しては刑法第四八条により各所定罰金額を合算し、被告人田村の判示の罪と前示確定裁判を経た罪とは刑法第四五条後段の併合罪であるから、同法第五〇条により未だ裁判を経ない判示の罪につき処断することとし、

二、(量刑)以上それぞれの刑期及び罰金額の各範囲内において、被告人松崎を懲役三年に、被告人三沢、同松尾、同飯田、同根本を各懲役一年六月に、被告人坂戸を懲役一年二月に、被告人森本、同原を懲役一年に、被告人永里、同入倉、同福岡を各懲役一〇月に、被告人小池、同野々上を各懲役八月に、被告人木下、同田村を各懲役六月に、被告人横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同笹部を各懲役四月に、被告人今を罰金七万円に、被告人木村を罰金五万円に、被告人吉留、同石切山、同石川、同松本を各罰金四万円に処し、

三、(執行猶予)被告人飯田、同根本、同坂戸、同森本、同原、同永里、同入倉、同福岡、同小池、同野々上、同木下、同横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同笹部に対しては、犯情により刑法第二五条第一項を適用して刑の執行を猶予するを相当と認め、公職選挙法第二五二条の規定の趣旨をも勘案し、それぞれの裁判確定の日から、被告人飯田、同根本に対し五年間、被告人坂戸、同森本、同原に対し各四年間、その余の右各被告人に対し各三年間右各刑の執行を猶予することとした。

四、(未決算入)同法第二一条を適用して未決勾留日数中被告人松崎に対し六〇日、被告人三沢に対し五〇日を同被告人らの各刑に算入し

五、(換刑処分)被告人今、同木村、同吉留、同石切山、同石川、同松本において右罰金を完納できないときは、同法第一八条により金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。

六、(没収、追徴)押収にかかる選挙用ポスター合計二七八枚(昭和三九年押第一〇三号の一九から一五一まで)に貼付されている各偽造証紙は、判示第一の(一)、(1)の公記号偽造の行為により生じたもので何人の所有をも許さないものであるから、刑法第一九条第一項三号、第二項により被告人松崎、同三沢、同飯田、同永里、同入倉からこれを没収し、押収にかかる現金一一万円(昭和三九年押第一〇三号の一五八、一五九)は被告人森本が収受した利益の一部であるから公職選挙法第二二四条前段によりこれを没収し、同被告人の収受した爾余の利益及びその他の関係被告人らが収受した各利益はいずれも没収することができないから、同条後段により、次の通り各被告人から追徴する。

被告人松崎から一一万円(被告人森本に供与した判示第二の二、(二)の一〇万円のうち、その場で謝礼として返戻交付を受けた二万円、被告人坂戸に供与した判示第二の三、(一)の二二万円のうち右同趣旨の二万円、同第二の三、(二)の二二万円のうち右同趣旨の二万円及び肥後に供与した判示第六の一の一〇〇万円のうちの右同趣旨の五万円)、被告人飯田から二五万円、被告人坂戸から五五万円(同被告人が供与を受けた判示合計五九万円から被告人松崎に提供返戻した四万円を控除)、被告人森本から二〇万円(同被告人が供与を受けた合計三三万円から前記没収の一一万円及び被告人松崎に提供返戻した二万円を控除)、被告人松尾から五五万円(同被告人が供与を受けた判示第三の三、(一)、(二)、(三)、(四)の五〇万円及び同四の(一)の他と共同して供与を受けたうちの自己取得分五万円)、被告人原から七万八〇〇〇円(同被告人が供与を受けた判示第三の六の二万八〇〇〇円及び判示第三の五、(一)の他と共同して供与を受けたうち自己取得分五万円)、被告人小池から三万円、被告人野々上から一三万円、被告人田村から一〇万円、被告人横山、同田仲、同八賀、同浅野、同藤井、同星野、同笹部からそれぞれ四万八〇〇〇円、被告人今から三万八〇〇〇円、被告人木村から三万円、被告人吉留、同石切山、同石川、同松本から各二万円。

(公職選挙法第二二四条は、同条所定の利益及び価額は常に国庫に帰属せしめ、これを授受した双方をして犯罪に関する利益を保持せしめないことを目的とした規定とみられるのみならず、授受された利益自体は、これを供与した者に返戻された場合においても同条所定の利益としての性質を変えるものでないから、如何なる趣旨の下においてであれ、供与者が供与した利益そのものを被供与者から返戻を受けてこれを保持する場合は、当該供与者からこれを没収し、もし没収できないときは、供与者からその価格を追徴すべく、被供与者からは追徴しないのを相当と解する。)

七、(公民権停止期間の短縮)被告人今、同木村、同吉留、同石切山、同石川、同松本に対しては、公職選挙法第二五二条第三項を適用してそれぞれ選挙権被選挙権を有しない期間を三年間に短縮する。

八、(訴訟費用の負担)訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文(連帯負担については同法第一八二条)により、主文(別表(一))のとおりそれぞれの関係被告人に負担させる。

九、(公訴事実の一部が認められなかつた理由)本件公訴事実のうち、被告人福岡が、被告人松崎、同三沢、同飯田と共謀のうえ、判示第一の一、(一)、(2)別表(二)の犯罪一覧表中番号3、9の各偽造公記号使用及び法定外文書の頒布をしたとの点については、被告人福岡が右配付に際し、証紙が偽造のものであつたことを認識していたとの点に関する証明が十分でない。被告人三沢、同飯田の各検察官調書のうちには、被告人福岡が右配布前において被告人松崎から偽造証紙のことを聞き知つていたのではないかと疑わしめる供述記載部分があるけれども、被告人松崎は、検察官に対しても、当公判廷においても、何ら被告人三沢らの右供述を裏付けるに足る事実を述べていないのみならず、被告人福岡は検察官に対する供述調書及び当公判廷における供述を通じ、一貫して右配布分のみについては右知情の点を否認していること等にかんがみると、被告人福岡が右問題の当時、被告人松崎から聞知する等して証紙偽造のことを知つていたかどうか疑問である。結局、偽造公記号使用のうち右の部分については犯罪の証明がなきに帰し、またこの部分については法定外文書たるの認識があつたことについての証明もないことになるので、いずれも無罪であるが、右は一罪として処断さるべき判示第一の一、(一)、(2)の偽造公記号使用及び法定外文書頒布の罪の一部として起訴されたものであるから特に主文において無罪の言渡しをしない。

(量刑の事情)

(一)  わが国首都の知事を選ぶ選挙として、全国民注視の的であつた本件東京都知事選挙等において、判示の如き多様、悪質な違反が行われたことは、誠に遺憾である。選挙の公正を害すること甚だしく、国民に対し、民主政治の基礎である選挙制度に対する不信、疑惑の念を抱かせた責任は重大である。

本件事犯の特色として次の諸点をあげることができる。その一は、証紙の偽造であり、その二は大政党の本部事務局員が違反の中心をなし、しかも党の活動費をもつて買収等を行つた点であり、その三は買収の相手方が大部分庁内紙等の新聞経営者であつた点であり、その四は、肥後享を買収、利用した点である。

(1)  これまでにも、選挙用ポスターに付される選挙管理委員会の検印の偽造がなかつたわけではない。本件記録によつても判示千葉県知事選挙において、相当数の検印の偽造、行使が行われた形跡が窺われる。しかし検印と証紙とでは、その用途は同じでも形式が全く異なり、前者はポスターに簡単な模様の穴をあけるものであるのに対し、後者は、切手や印紙と類似の高度の技術を用いた印刷物である。これをもあえて偽造、行使した所犯は何としても重大、悪質であつて、目的のためには手段を択ばぬ犯行であると言わねばならない。

(2)  大政党の本部事務局員で、党の選挙対策実施面における重要な地位にあつた者が、違反の中心をなし、その多額にのぼる買収費は、殆んどが党の活動費によつて賄われたことも、従来その例を見ないところである。単に一候補者やその関係者が、違反を犯した場合とは異なるものがあると言わねばならぬ。

(3)  本件買収の対象となつた多数の庁内紙、業界紙、地方紙等はいずれも一般の新聞紙とは異り、規模も小さく取材および購読の範囲も比較的狭いものではあるけれども、いわゆる社会の公器として選挙に関する報道及び評論の自由を有するものであることは言うまでもない。従つて、その買収、被買収は通常のそれより影響するところが大きく、犯情は重いと言わなければならない。それ故に公職選挙法一四八条の二は新聞紙等が買収され、進んで記事掲載にまで至つた場合には、通常の買収事犯より重い刑を科しているのである。本件訴因は、軽い通常の買収犯に止まるものではあるが、以上の点は考慮さるべきであると考える。

(4)  更に、被告人松崎らが、自らを誇り高き選挙屋と称し、選挙を喰い物にしていた如き肥後を買収、利用したことは、事情の如何を問わず、甚だ遺憾である。千葉県知事選挙と言い、東京都知事選挙と言い、松崎らの肥後との結びつきは選挙を甚だみにくいものとしている。勿論肥後を敵方に廻した場合の不利益を思うと、その懐柔策を講じようとすることも、理解に難くはないけれども、右両度の選挙における肥後との関係を見ると、必ずしも、終始消極的な態度であつたとは言えず、むしろ積極的にこれを利用し、種々裏面工作を行つたことが認められるのであつて、特に千葉県知事選挙においてその感が深い。

(二)  各被告人について、

(1)  被告人松崎については、上述したところがそのまま個人的犯情にあたる、その刑責の重かるべきは多言をまたない、個人的事情には酌むべきものなしとしないが、実刑のほかなきものと思料する。

(2)  被告人三沢は、前示の如く単なる自民党本部出入りの印刷商人たるに止まらず、昭和三四年施行の参議院議員選挙以来選挙毎にこれに関係し、本件東京都知事選挙における証紙偽造についても、最初これを持ちかけたのは同被告人であつて、同事犯において果した役割は重大である。しかも、福岡県知事選挙における証紙偽造に至つては単なる儲け仕事と言うのほかはなく、甚だ悪質である。更に千葉県知事選挙においても松崎の下に裏面工作に関係したことが窺われる。選挙の公明をけがした責任は重く、実刑も已むを得ぬものと考える。

(3)  被告人飯田は、前東京都知事安井誠一郎に恩顧を受けた関係があつたからとは言え、地方公務員たる身分を有しながら、都知事選挙毎に選挙運動に関係して来たことは、それ自体甚だ不謹慎である。本件においても偽造証紙をポスターに貼付、頒布する仕事を分担し、主としてその謝礼として判示金員の供与を受けた点、犯情は重いと言わなければならない。ただ証紙偽造の関係については、松崎、三沢が主動的であつて被告人飯田は従たる立場にあつたものと認められる等の点を斟酌し、特に刑の執行を猶予することとした。

(4)  被告人永里、同入倉は、共に判示照文社の役員ではあるが、実質は単なる従業員であつて、判示各証紙偽造についても、地位は従属的と認められる点を考慮して共に刑の執行を猶予することとした。

(5)  被告人坂戸の収受金額は五九万円の多額であつて、犯情軽しとはなし難いが、同被告人は多年婦人団体の世話役として認められて来たが、前述の如く、その主宰する女性問題研究所から前年に引続き「女性の年鑑」を発行すべく準備中であつて、かねがね自民党婦人局にも援助方を申入れており、松崎にも党からの援助斡旋方を依頼していたが実現せず、その資金に窮していたところから前回の都知事選挙と同様、東候補のために選挙運動をし、その報酬を得てこれに当てようと考えたもので、事実婦人層に対する選挙運動はしたが、収受した金員によつて更に他を買収する等のことはしなかつたこと等諸般の事情を考慮して刑の執行を猶予することとした。

(6)  被告人森本の収受金額も合計三三万円であつて決して少額とは言い難く、また同被告人が本件都知事選挙において三業界方面に相当広範囲にわたり選挙運動をしたことは前示の通りである。しかし、同被告人は古くからの自民党々員であつて、これまでも折にふれ党活動に従事し、党のため尽力して来たものであり、収受金額が多額であつたのは右のような特殊事情も理由となつたためであるとみられること、同被告人は右収受金員のうちから、ポスターの配付先二、三の者に金員を提供したことが窺われるが、その額はごく些少であつて、犯情の上で特に考慮すべき程のものではないこと、その他相被告人らとの科刑の均衡等諸般の事情に照して、刑の執行を猶予すべきものとした。

(7)  被告人松尾について。庁内紙関係者、新聞連盟関係者に対する買収事犯については、全事犯が同被告人を通じて行われたと言つても過言ではない。その端緒となつたのは、判示の通り松崎から選挙運動の依頼を受けたことによるものではあるけれども、被告人松尾がこれを好機として、屡々松崎に金員を要求し、自らの利得をも図つたものであることは看過できない。その回数も六回に及び、同被告人自身の取得した金員も合計五五万円に達しているが、その授受に関係した金員は合計一八〇万円の多額に及んでいる。同被告人は、庁内紙経営者のうち最も有力で、倶楽部の幹事をしていた立場上、松崎の依頼に応じて選挙運動をする反面、庁内紙各経営者らに、この機会を利用して利益を得しめようとする意図でもあつたと思われるが、その結果殆んど全庁内紙関係者を買収事犯に引き込むこととなつたものである。以上の犯情にかんがみると、その責任は重く、年令その他個人的事情を考慮しても、実刑已むを得ぬものと思料する。

(8)  被告人原について。庁内紙丸の内倶楽部関係者に対する買収については、同被告人も主要な役割をなし、犯情必ずしも軽いとは言い難い。しかし、当時同倶楽部の幹事であつたこと、その収受金額その他諸般の情状を考慮して刑の執行を猶予することとした。

(9)  被告人野々上は、昭和二六年及び昭和三四年にいずれも懲役刑執行猶予の判決を受けているにも拘らず、重ねて本件違反を犯すに至つたもので、その法軽視の態度は非難さるべきではあるけれども、選挙違反は今回が初めてであること、収受した金額その他諸般の事情を考慮して刑の執行を猶予することとした。

(10)  被告人田村は、これまで度々公職選挙法違反の罪によつて裁判を受け、実刑にも処せられているので、本件につき刑の執行を猶予することは許されない。受刑後間もないこと、収受した金額等を斟酌して前記の刑を量定した。

(11)  被告人根本について。前述の通り肥後を多額の金員をもつて買収し、千葉県知事選挙に利用したことは、同選挙に汚点を残したとの感を免れないもので、同被告人の責任は軽くない。ただ、同被告人は、ながらく衆議院議員川島正次郎の議員秘書をしており、当時は国務大臣であつた同氏の秘書官であつて、肥後に対する二回の金員提供は、いずれも自己の独断でなしたものである旨主張しているけれども、疑問の点もあること等諸般の事情を考慮して刑の執行を猶予することとした。

(12)  その他の被告人らは、以上の被告人に比すれば犯情は軽い。事犯に対する関与の程度、収受金額、供与金額、回数その他諸般の事情を斟酌して前記の通り懲役刑の執行猶予若しくは罰金刑とした。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 海部安昌 川名秀雄 柿沼久)

別表(一) 訴訟費用負担一覧表(略)

別表(二)

番号

犯行共謀者

交付年月日(頃)

交付者

交付場所

被交付者

交付ポスター枚数(約)

1

松崎長作

三沢美照

飯田新太郎

昭和三八・四・九日

松崎長作

東京都千代田区平河町二丁目七番地 砂防会館

自由民主党本部

朝日タイムス社発行責任者 森本政一

五〇

2

〃 〃

同区永田町二丁目一番地

グランドホテル

全国中小企業団体総連合組織部長

浜崎敏雄

七〇

3

〃 八日

飯田新太郎

(下記事務所受付係を通じ)

中央区銀座西五丁目一番地 東竜太郎選挙事務所

東京都知事公館受付事務補佐員

藤島はる

4

〃 九日

(〃)

無職

明石れい子

5

〃 〃

前記

自由民主党本部

都連婦人部事務員

南フサ子

一〇〇

6

〃 〃

千代田区富士見町二丁目五番地 東京都助産婦会館

日本助産婦会副会長

橋本春子

五〇

7

〃 一一日

前記 東竜太郎選挙事務所

日本体育協会国体委員

飯田勝康

一〇〇

8

〃 〃

福岡喜一

(但し犯意なし)

前記 自由民主党本部

自由民主党中央支部委員 白石行美

五〇

9

〃 〃

〃 (〃)

自由民主党文京支部委員 一万田誠

五〇

10

松崎長作

三沢美照

飯田新太郎

福岡喜一

〃 一二日

自由民主党板橋支部委員 鈴木正美

三〇

11

〃 〃

自由民主党足立支部委員 岩崎彪

一〇〇

12

〃 〃

墨田区吾嬬町西二丁目六六番地 伊藤嘉平方

自由民主党墨田支部委員 伊藤嘉平

一一〇

13

〃 〃

練馬区貫井町三四三番地

越後幹雄方

自由民主党練馬支部委員 越後幹雄

三〇

14

〃 〃

江東区大島町七丁目三三七番地 三輪英嗣方

自由民主党江東支部委員 三輪英嗣

一五〇

15

〃 〃

目黒区原町一、二六八番地 熊谷喜一方

自由民主党目黒支部委員 熊谷喜一

三〇

16

〃 〃

中野区東郷町三六番地 花村四郎方

自由民主党中野支部委員 前田頼正

三〇

17

〃 〃

世田谷区太子堂町四七四番地 西沢りう方

自由民主党世田谷支部選対事務局長

井原直美

二〇

18

〃 〃

北区王子一丁目九番地

鈴木仙八事務所

自由民主党北支部責任者 虎沢俊信

二〇

19

〃 〃

新宿区戸塚町三丁目一二三番地 馬場謹爾方

自由民主党新宿支部委員 馬場謹爾

二三

20

〃 〃

葛飾区新宿町四丁目八九三番地 高木四郎方

自由民主党葛飾支部委員 高木四郎

三〇

21

〃 〃

立川市曙町二丁目八八番地 自由民主党三多摩連合会事務所

自由民主党立川支部

伊藤平八

五三〇

22

〃 一三日

北区浮間四丁目八番地

高野光一方

自由民主党北支部委員

高野光一

三八

23

〃 〃

台東区上車坂町五一番地

松本浩方

自由民主党台東支部委員

松本浩

二〇

24

〃 〃

前記 自由民主党本部

公団住宅自治会協議会常任委員

河西[金心]次郎

一九〇

頒布使用枚数 合計 一、八二七枚

別表(三) 一覧表

番号

年月日

場所

被供与者

金額

1

昭和三八・二・一四頃

東京都千代田区丸の内三の一東京都庁内 丸の内記者倶楽部

河野通夫

五万円

2

〃 〃 〃

右同

横山昇一

三万円

3

〃 〃 〃

同区 丸の内三の一〇富士製鉄ビル内常盤家

田仲誉善

三万円

4

〃 〃 〃

右同

八賀晧太部

三万円

5

〃 〃 〃

右同

浅野浩

三万円

6

〃 〃 〃

右同

藤井清治

三万円

7

〃 〃 〃

右同

星野虎次部

三万円

8

〃 〃 一六頃

前記 丸の内記者倶楽部

今進一

二万円

9

〃 〃 〃

右同

笹部長次

三万円

10

〃 〃 〃

右倶楽部前

木村義郎

三万円

合計 三一万円

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